月のクレーター「プラトー」の問題





 月理学者によって図解されたプラトー・クレーターの内部は町の地図のような外観さえ持っている。というよりも、杓子定規な直線的街路を避けた近代都市区画の1つのようだとさえ言えるかもしれない。プラトーのそこにある明斑や筋は明らかに相互関係を持っている。それらは、明るさと見え易さが変動し、時に相互に補う風でもある。1つが消えていくと、隣のものが明るくなることもある。明斑は、ほぼ決まって明るさのより劣る筋の上、しかも主に筋が交差する所に現われる。斑点の数には変化があるが、その変化は太陽高度、或いはその光線の角度によるものばかりとは限らない。
ウエッブはプラトーにかなりのスペースを割き、他の事項と並んで、クレーター底の4つの主な筋の影の1855年以前の変化のことを述べている。プラット、グレンディル、エルガーその他による注意深い作業をバートが調整・分析・チェックしているが、それによると局所的な性質の異変が見分けられる。模様と筋の数は、観察家によって、しかも夜毎、時間毎に違う。プラトーの内部は、月面の地形一般とは正反対に、太陽が昇るにつれてだんだん暗くなる。これが化学反応でないとすると、ほぼ確実に何らかの生命によるものだ。

「英国科学振興協会ジャーナル」(第14巻)はプラトーに関する殆ど本1冊分くらいの報告を載せている。報告したのは当代切っての月理学者のバートで、彼はその謎を解くために一致協力を呼びかけた。バート自身も、月面の「有機的」変化を示唆すると考えられうるものを認めることに対する職業的な抵抗感を持ち合わせていた。とはいえ、それ以外の見方では異常としかいいようのない観察結果を合理的に説明してくれるのはそうした仮説だけのようである。これらの観察結果は月のクレーターで起きていることについて新しい概念を持つことを要求する。




プラトー 物体の出入りや動きが見られるプラトー・クレーターの謎めいた内部、クレーターの右にある巨大な「物体」は満足な説明がされてこなかった。「我々の月」より


自著「月」の中で、グーデッカーも月の表面で変化が起きているという考え方に一切反対する傾向を示した。しかしながら彼は、観察家がプラトーの様々な地域で多くの異なった白斑を見てきたこと、及びそれらが行ったり来たり動き回っていないと考えることが困難あることを認めた。数年間にわたって活動した観察家の協力チームによって行われた集中的研究で得た証拠から、明斑と筋は太陽高度に無関係に見え易さが変化すると彼は結論せざるをえなかった。グーデッカーはさらに、奇妙な構造が存在するプラトーの東壁の上に霧ができたという観察例を引き合いに出し、プラトーの表面ではもやあるいは雲によって、かげりができることが時々あると結論した。

 1882年、最大かつ最も謎めいた彗星の通過時に非常に注目すべきことが観察された。観察家はA・S・ウイリアムズで、3月27日午後8時10分、太陽が月の空低くかかっていたためにクレーターの底全体が影に入っていた間、ミルク色の光で内部が輝き、それがクレーター底の4分の3をおおっていたのを彼は見たのだ。残りの4分1は普通通り完全に黒かった。輝きは1時間後に消えた。これは真空中で限られた地域上において自己維持できる何らかの自己発光物質を示唆する。

「イングリッシュ・メカニック」(第27号)にはプラトーに関しての連続物の記事が乗っており情報満載である。

 プラトーは差し渡し60マイルであり、ウイルキンスの言うには、それは「もや」或いは「雲」の進入を受けたという疑いを持たれてきた。もやが底や壁に開いた穴から噴出したという説もあるが、彼はそれより塵の方が説明としては良いと考えている。1944年8月12日、素晴らしい気象条件の下、ウイルキンスは8インチ半の望遠鏡でプラトーを眺めた。その時それは明暗境界線近くで、底の4分の1ほどに既に影が筋になって走っていた。残りは暗い灰色ががっており、中央近くの「非常に明るい丸い斑点」は別として何一つはっきり識別できなかった。ウイルキンスはこれがプラトーの底にある小クレーターで最大のものだと考えたが、こう述べている。
 普段はある程度努力しないと見つからない対象がなぜ突然明るい斑点になったのかは謎である。あるごく小さなクレーターが太陽を強く反射する何かで埋め尽くされているように見えたのだ。それが何であったにせよ、それは完全に普段の姿を変え、輪郭のはっきりした小クレーターを明るい斑点に変身させたのだ。

 「プラトー」をはじめとするその他のクレーターも、粘り強く持続的かつ集中的、組織的研究を是が非でも必要としている。「プラトー」の遷移と移り変わりの不思議な問題を解ければ、地球近隣の宇宙生命について新しく圧倒的な再評価に向かって大きな一歩を踏み出したことになる。

















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