量子コンピューターの開発進む









計算を担う液体分子の入ったガラス管を持つIBMアルマデン研究所のアイザック・チャン博士 


量子コンピューターの現実化により天気予報や、経済予測の精度が飛躍的に向上するなど、社会に大きな恩恵がもたらされる。反面、今は解読不可能とされる通信ネットワークの暗号が解かれるなど、いろいろな影響も考えられる。










 チップも電子回路も何も入っていない細いガラス管、中に透明な液体が入っている。ガラス管に入っているのはIBMの化学者が特別に合成した分子。一つの分子の中にある特定の5個の原子核の磁気的な性質の違いが「0」と「1」を表す。つまり、1個の分子が5けたの2進数のデータ(5ビット)を表現する。それが膨大な数、ガラス管の中に詰まっている。この液体に加える磁場の向きや強さをプログラムに従って変える操作が「計算」で、それによる分子の磁気的変化を観測して計算結果を読みとる。
 しかも不思議なことに、量子力学と言うミクロの世界の物理法則に従って、各原子核は「0」と「1」の情報を同時に持つことができる。このため、1回の操作で5けたの2進数すべてに同じ計算をしたことになる。今の計算機は素子に電気が蓄えられているかどうかで「0」と「1」を表すので、どちらかの値しか持てない。量子コンピューターと通常の計算機との決定的な違いだ。例えば1000通りの数字を組合せた暗号を解く場合、普通の計算機では1000回の計算が必要なのに、10ビットの量子コンピュータなら1度で答えが出る。ビット数を増やせば、計算能力は飛躍的に拡大する。




 米国ではIBMの他、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、国立ロスアラモス研究所など、英国ではオックスフォード大学などで研究が進んでいる。日本ではNEC、富士通、東芝で関連の研究が進む。

半世紀前に発明されたトランジスタを基礎とする現在の計算機は、素子の微細化と高集積化によって計算速度を上げてきた。しかしこの微細化路線にも限界が見え始め。その限界を超える量子コンピューターは、早ければ2010年ころにも姿を見せるという。


(日経2001/1/19付)














戻る




























SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送