サマリア人の「トーラー」

 モーセ5書写本考察

 旧約聖書のモーセ5書、「トーラー」は、モーゼの時代から現在にいたるまで、正確に伝えられてきた。その辺を調べて見ると大変な苦労があったよう思える。古い時代の書物は、普通は羊皮紙や、パピルスでできている。当然時間がたてば傷んでくるがこれをすべて手作業で移し替えていたわけである。この写したものは写本とよばれている。もちろん聖書「トーラー」は大変神聖なものであり、写本製作には最大限の厳密さが要求された。写し間違えは、神への冒涜に等しいと考えていた為だ。写し間違えは「全宇宙を壊す」とされたのだ。
モーセ5書は他のヘブライ語の聖書とはまったく違うものと考えられていた。モーセ5書は、聖書の中でしめる重要性においても、その預言的な霊感の正確さにおいても、特別なものと考えられていたのだ。


実際に聖書の写本製作にかかわった人たちは「マソラ学者」とよばれて、写本を作成後に、部分部分で単語数を確認している。例えば、創世紀の写本作成後には文字数が78、064文字であることの確認をし、その上にヘブル語のアルファベットのアレフが何個、ベータが何個、……とすべてのアルファベットの数を確認している。このような厳密な作業をして伝えられてきた聖書は「マソラ本文」として知られ、現在もっとも正確な聖書写本といわれいる。



サマリア人の「トーラー」とユダヤ人の「トーラー」

征服、被征服の歴史の中で、イスラエルに新しくやってきた者たちはしだいに、わずかに残っていたユダヤ人と結婚するようになり、ユダヤ人の習慣の一部を取り入れるようになった。サマリア人たちは自分たちをユダヤ人と呼ぶことを主張したが、さまざまなバビロニア式の礼拝を保ちつづけた。
「トーラー」に忠実であろうとするユダヤ人にとって、身元をユダヤ人といつわるバビロニア式の異教徒ほど邪悪なものはなかった。それでもサマリア人は「トーラー」をうけいれた。
しかしサマリア人の「トーラー」のヘブライ語には、ユダヤ人の「トーラー」とは無数の違いがある。しかしテキストの意味にはほとんど違いがない。ユダヤ人の「トーラー」と同じように解釈できる。そのような多くの違いが入り込んだのは、サマリア人にはユダヤ人のような厳格な筆写の伝統がなかったからだ。サマリア人はユダヤ教の核心から離れていたので正確な「律法の文字」は、その「精神」や意味にくらべればあまり重要ではないと考えたからだろう。
 世界中のユダヤ人に使われている「トーラー」には、アッシュケナジ(北部および東部ヨーロッパの国々で使われているもの)、セファルデイ(ラテン系ヨーロッパと北アフリカの一部の国々で使われているもの)、そしてイエメナイト(イスラム教圏の国々で使われているもの)の3つがある。3つのテキストの間にある文字レベルの変化は、全トーラー30万4805字のうち、合計9文字、つまり変化は0.02%にすぎない。この3つのグループの離散は少なくともローマ時代、多分さらに古くまでさかのぼるだろう。なぜならエルサレムの破壊前に地中海沿岸にユダヤ人社会は存在していたからだ。
サマリア版トーラーの断片による反証例は、テキストの文字がどれほど簡単に変化するかを示し、一方、各時代を通じてユダヤ人の「トーラー」にはどれほど大きな配慮がはらわれたかを顕著に示している。(参考文献 ジェフリー・サテインオーバー著 聖書のミステリー)











































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